TPPのデメリットって何だろう?大揺れのTPPについて考える

アメリカの離脱宣言で大きな波紋を呼んでいるTPPですが、日本にとってメリットよりデメリットばかりが騒がれています。実際のところはどうなのでしょうか?問題点や展望を踏まえながら、TPP(環太平洋パートナーシップ)をひも解いてみましょう。

大詰めを迎えるTPP交渉

トランプ大統領就任によって、TPPからの離脱を表明したアメリカ。2015年に一旦は交渉妥結をしたTPP参加国にとっては今更?という思いは拭えないでしょう。

そもそもTPPは、シンガポールやニュージーランドなどの「P4(パシフィック4)」と呼ばれた4か国の小さな自由貿易圏に、2009年、大国アメリカが参加表明したことで次々と参加国が増え、2013年に日本も参加し、当初の3倍にあたる総勢12か国が参加する大きな自由貿易圏になった。という経緯があります。なので、アメリカの離脱表明というのは、舵を失った船のような状態なのです。

舵の代わりに11か国で帆を上げて出発するのか、否か、大きな選択を各国が迫られている状況です。

TPPの交渉分野

テーマとしては主に21の分野(細分化された31の分野として交渉されている事例もある)に分かれます。貿易全般、医療関係や農業、知的財産、金融関係、環境や労働に関することまで、単なる経済的な物流貿易にとどまらず、国家間に影響してくることを全体的に交渉内容として盛り込まれています。

TPP交渉これまでの経緯

アメリカの独断場のような形で交渉が始まっていたTPPですが、日本が2013年に正式に交渉参加したことにより、変化が生じました。

国で抱えるものはそれぞれあり、国によって事情が違うのだ。ということを各国が主張するようになったのです。甘利元経済再生担当大臣とアメリカ・フロマン通商代表との壮絶な交渉がこのことを物語っています(交渉前には黒髪だった甘利元大臣は交渉終了時には白髪になってしまいました)。この時、アメリカに対して大臣が説得に使った言葉が「1国のルールを他国に押し付けず、お互いウィンウィンでなければならない」という素晴らしい言葉でした。

その後、日本とアメリカが主導する形で各分野の交渉が行われ、大筋合意の期限が何度も先送りされながらも、2015年10月に12か国による大筋合意の声明が発表されました。

TPPのメリットとデメリット

メリット

①関税撤廃により、日本製品の輸出が増える。

輸出が増えれば企業の利益が増え、景気が良くなります。

輸入食品(肉・果物・野菜・乳製品・調味料・衣類など)が安くなる

消費者にとっては喜ばしいことです。

③政府試算によると、GDP(国内総生産:国内で日本人が働いて稼いだ額)が年間約2700億円増加する。景気上昇、日本が豊かになります。

デメリット

①関税撤廃により、安い農産物が輸入・販売されて日本の農業が打撃を受ける。

日本の食料自給率が約40%から10%台になり、自国の食べ物だけでは生きていけなくなるかもしれません。食糧危機が勃発すれば日本はアウトです。

②遺伝子組み換え食品・残留農薬などの規制緩和により、食の安全性が損なわれる。

健康被害拡大の恐れがあります。

③混合診療(保険適用診療と保険適用外診療の併用)解禁等により、医療格差が生じる懸念がある。

日本では国民皆保険制度によって、診療費や薬価は国が決めて、国民が平等な医療を受けることができます。混合診療は、そういった診察以外の自由診療(自己負担)が増えるので、保険適用外の高額な医療技術の治療や薬品は、富裕層でなければ受けられなくなってしまいます。このような事態になれば、富裕層のみ多くの選択肢が増え、様々な医療が受けられる。という格差が生じ、事実上、国民皆保険制度の崩壊につながる懸念があります。

TPPの抱える問題点

ISD条項

国家が国民・公共のために定めた制度などによって、FTA(自由貿易協定)を結んでいる国の外国企業が貿易や経済活動を邪魔された、損害を被った、としてその国の政府を世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」(アメリカ寄りの組織)に訴えることができる条項です。もし、当事国が敗訴した場合、該当する制度の廃止や多額の賠償金の支払いを求められます。しかも、当事国の裁判所は関与できず上訴はできません。一審決着です。国家にとって非常に厳しい内容なのです。国家・国民の主権利益が損なわれる可能性があり得ます。

日本は国家の主権を損なうような合意はしない、と言ってますが、TPPで採用されれば合意しないわけにはいかなくなるでしょう。

ラチェット規定

合意・締結をした後に、制約や規制の変更・強化をしてはいけない、という規定です。

「後出しじゃんけんはダメだよ」みたいなイメージですので、当たり前のような感じがするのですが、実はとんでもない落とし穴があるのです。それは、後から参加した国は、すでに決められたルールを守らなければならない、ということなのです。議論をすることなく決められた、自国にとって最悪なルールだったとしても例外はありません。

離脱時の訴訟リスク

TPPの規定上、離脱は自由となっています。しかし、離脱時に法改正や規制強化などを行った場合、TPPのルールに基づいて進出した海外企業が、相手国に対し超多額な損害賠償の訴訟を起こすことになり、当事国は大変な損害を被ることになります。事実上、発効後の離脱は非常にリスクが高く、困難であると言えます。

なぜ反対の声が多いのか

デメリットの項目で掲げたように、食の安全や食料自給率の低下、医療費の高騰や保険制度の将来性、ISD条項などによる国民・国家を守る法律や制度が企業の利益のために崩壊される危険性など、日々の生活に密着している大事なことが、大きく後退する懸念があるからです。

今後の展望は?

TPP協定の署名は2016年2月に行われており、2年以内に全12か国が国内の手続きを完了させ、 発効するスケジュールになっていたのですが、アメリカ離脱によって11か国となった参加国は、TPP11のそのままの体制でスタートするのか、違う形を模索するのか、今後の首脳会議によって決めていくことになりました。が、暗礁に乗り上げてしまったことは間違いないですね。

しかし、このような状況をチャンスと捉えている国があります。中国とロシアです。

特に中国は、アジアとヨーロッパを結ぶ「シルクロード経済圏構想」や、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立など、アジアからヨーロッパの主権に大きく関わろうとしています。もし、中国がTPPに関与することがあれば、南シナ海で起こっている海洋問題のような強引な主張ややり方が懸念されているところです。日本としても、由々しき事態になりかねないですね。

TPPのデメリットを正しく認識しておこう

経済的なメリットを前面に押し出して、政府はTPP参加を決定しました。その反面、デメリットはあまり論議・公表されずに決着されようとしています。確かに経済(お金)は大事です。生きていくには必要なものです。しかし、国民あっての国家。その基本的なことが、土台から崩されかねない大きな問題を秘めていることを、私たちは認識しなければならないでしょう。